12.20.2014

寄り道ポイント復活

この春に惜しまれつつ閉店した神楽坂上の文鳥堂書店
後にはどうせつまらない不動産屋でも入るのだろうと思っていたがしばらくの間空き家状態が続き、漸く10月あたりから何やら改装工事が始まったと思うと、出来上がったのは意外な事にまたも本屋。
正確には本屋兼カフェ兼ギャラリー、その名をかもめブックス。

11月29日開店
手前がカフェとバー(月替わりで全国の地ビールを供するそうな)、奥が若手作家の小品が並ぶギャラリー、それ以外が本と雑貨という間取りなので普通の本屋のようにぎっしりと品揃えが豊富な訳ではないが、その分店のカラーに合わせて選んだ書籍のみ並べているような感じ。いわゆるビジネス新書の類は一切ないしベストセラーが堆く平積みになっている事もないが、かといってサブカルやマニアックに傾倒しているでもない、丁度いいバランスの品揃え。コミックスの種類も数える程しかないが、進撃もワンピも置いてない代わりに「きのう何食べた?」「山賊ダイアリー」に加え旧作の「バカ姉弟」と、こちらも中々分かってらっしゃる。

普通な割にお値段高めなコーヒーは立ち寄る度に飲む程でもないが、こういう面白い店はぜひこの方向性を守りながら、採算ベースにうまく乗せて生き残って欲しいと思う。長尺タイルをヘリンボーン貼りするような趣味のいいタイル使いのお店には。

タイルDIYerとしてはやはりタイルが気になる


漆喰左官(5)すさの効果はいかに

一回目、散々な目に遭う。二回目、落とし前をつける。三回目、余裕。
とは矢沢永吉の言葉だが、この言葉を辿る様に二回目で何とか終了した我が家の内壁左官。
ならば「三回目、余裕。」まで忠実になぞらなくては。という訳ではないが、施工の後に面白い素材を見つけたので試してみたくなり、三週間ぶりに鏝を握る事とする。


塗り壁とともに繊維を塗り込むと強度が増す事は古くから知られていて、このまぜものをすさと言う。
伝統的なすさは藁。しかし藁すさは褐色。よって壁を白くしたい場合にはやや不向き。だが今は、白さを損なわない化学繊維のすさも出回っている。
今回試す「ダイヤウォール」はナイロン繊維のすさ、見た目は丁度ナイロン紐を細かくばらして細切れにしたような感じ。これを混ぜれば塗り壁の宿命であるクラックが発生するリスクは大分軽減され、また元から白いので白壁にも向いているというのが売り口上。
こういういいものがあるなら三週間前の工事でも使いたかった。知るのが少し遅かった。
強度が増すのはいいが、仕上がりや施工性はどうなのかも比べてみたい。という事で、一階DK奥、西側の窓の上の壁をこれを用いて塗ってみる事とする。

ビニールで養生してー
シーラー塗ってー
左官工事は水工事、家が水浸しにならないよう、大型のビニールシートで念入りに養生する。
なおホムセンではなかなか手に入らない工事関係の素材を調達するのにMONOTAROは大変重宝する。鉛筆一本からガスマスクまで何でも取り揃えているので、顧客登録すると勝手に送ってくるカタログを眺めているだけでも楽しい。今回の一連の左官工事にあたってはここから鏝板と養生シート※1、マスキングテープを購入。

練る練る練る練る練る練る
追加で取り寄せたHip漆喰「白土」4kgの蓋を開け、少量のすさを加えてひたすら練る。
途中ですさを追加し更に練る。
なお漆喰を練るのには百均のお玉が遠慮なく使い捨てできて便利だが、先端が樹脂で出来ているタイプの方が丈夫なのでお勧め。一見丈夫そうな総ステンレス製のお玉は漆喰の堅さに負けてぐんにゃり曲がってしまい使い物にならないので注意。役に立つのかこの情報

すさを加えて練るうちに柔らかくなった漆喰は、すさの繊維の効果でやたらに粘度が高い。
通常の漆喰がクリームなら、こちらは納豆。
納豆をかき混ぜる魯山人よろしく練りに練った漆喰をお玉で掬って鏝板に盛り壁に向かうが、粘度の高さゆえなかなかスムーズに伸びず、鏝じまいが悪いというか、明らかに鏝の切れが悪い。
(つい一月前はひいひい言っていた素人が「鏝の切れが」とか一丁前な事をのたまうあたりが「三回目、余裕。」笑)

今回の作業は二時間、使用した漆喰は3kg。余った漆喰は百均のタッパー風ケースに詰めて密閉保管
塗り終えて総括すると、すさを追加する事で施工性だけでなく仕上がりもそれなりに劣ってしまうのは避け難いところ。何とか均そうとしたが表面は結構ボコボコ、いくら鏝押さえを繰り返しても艶は出ない。目に付きにくい狭い壁だからよかったようなものの、これで大壁一面を塗るのはそれなりに大変だったろう。
完全に乾ききった後も、壁の白さはやや劣るように見える。白いすさとはいえ、やはり混ぜ物をすると漆喰本来の白さは少し損なわれてしまうのかもしれない。ていうかよく見たらこのすさ微妙にグレーがかってるし(画像一枚目)。

強度とクラック予防を取るか白さと仕上がりを取るか、あちら立てればこちらが立たず。大きな地震でも発生すればすさ混ぜといて良かったねとなるかもしれないが、勿論何があっても絶対にクラックが入らないと保証がある訳ではなく、逆にすさを追加しなかったからといってバッキバキに割れるとも限らない。ここは考えどころ。
現時点の自分の結論としては、
「三週間前にこれを知らなくて良かったね」
どっとはらい。


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※1 一ロール購入して殆ど余った養生用ビニール、欲しい方いたら差し上げます

11.30.2014

漆喰左官(4)リターンマッチ

再度準備を整えて迎えた次の週末。
再度シーラーを塗布すると杉並Rの見学会へ。帰宅すると早速作業に取り掛かる。
今度は開封した漆喰をいきなり鏝板に盛らず、100均で買ってきた柄杓を突っ込んで練って練って練る。少量の水を加え、さらに練って練って練る。練るうちに漆喰からはゴリゴリ感が消え、徐々にクリームのような風合いに変化していく。これだ。
頃合を見計らって鏝板に盛り付けると、スポンジで水浸しに濡らした壁に叩き付ける。鏝を使って下から上に、右から左に、左から右にと抑える。
漆喰は前回とは比べ物にならないほどよく伸び、扱いやすい。そしてなかなか乾かない。おおこれだ。

手応えを確かめたところで、後は最後まで一気呵成。というか左官工事が他のDIYと違うのは中断が許されないところで、途中までで終わってその後再開した場合は塗り足した継ぎ目の跡が不自然に残ってしまうので、一度塗り始めたら否応なく一気呵成にやり遂げるしかない。持ち場を離れられるのはせいぜい十分、イナフではなくテンミニッツ。トイレも食事もメイク落としもおむつの交換もその間に済ませるのだ。
リターンマッチは順調に進む。とはいえ素人の腕前では鏝で抑えれば抑えるほど鏝跡が残ってしまうので(かといって抑えなければ強度が出ない)、早々に綺麗に仕上げるのは諦めて鏝ムラ仕上げらしく見せる方向に切り替える。しかしどんな仕上げも自由自在に鏝を操る左官職人はやっぱりすごい。素人ではとても真似できない技術は高い工賃を取るだけの事はある。

一階北壁ぬーりぬーり
一階北壁、塗り終わり翌日。乾ききっていないのでまだグレー色
続いて二階北壁ぬーりぬーり
薄墨色に鈍色を重ねてぬーりぬーり
一番奥に辿り着いたら終了

今回は前回と比べて作業時間もぐっと短く、一階は四時間、二階は六時間で完了。人一倍不器用な自分でこの時間なので、器用な人であればこの半分程度でやり終える事が出来るだろう。いや左官も楽しいね。疲れるけど。
表面は荒々しく波打ち、艶もあったりなかったりとどこまでも素人丸出しの拙い壁面ではあるが、差し込んだ西日に浮かび上がる鏝跡の陰影は自分にとってはとても好ましい味となる。特に二階に塗りなおした「鈍色」の、仄かにグリーンを含んだ独特のグレーの色合いはとても気に入ったので結果オーライ。幸せなDIYの秘訣はあくまで評価尺度を自分自身に置く事。

「鈍色」乾くとこんな色

しかし二回に分けて塗りも塗ったり、一階は20kg二階は30kgの計50kg。なんかライトウェイトハウスでなくなってきているような気がするが大丈夫か。しかも二度塗りした箇所など、数えてみれば七層構造の壁(石膏ボード>表面の紙>ローラー漆喰>シーラー>鏝漆喰>シーラー>鏝漆喰)になってしまっているのだが。ミルフィーユか。
まあタイルを張り詰めるならまだしも、この程度ならまだ大丈夫でしょう。多分。

空き容器は燃えないごみの日にポーイ


11.29.2014

漆喰左官(3)カラーチェンジ

再施工用に改めて取り寄せた漆喰は一階用に12kg、二階用に20kg。前回は8kgと10kgでいずれも3-4割を残してなくなってしまったので、今回はこれだけあれば間に合う筈。
そして二階は塗り直すついでに色を「薄墨」から「鈍色」へとチェンジ。

ショールームにまで見に行って決めた「薄墨」だったが、板切れに塗られたサンプルと実際に広い壁面に塗った場合とではやはり印象が異なった。クールで微妙な色合いの「薄墨」色は微妙すぎて白壁とあまり変わらないように見え、当初イメージしたグレーと随分違う塗り映えとなったので、この際もう少しはっきりしたグレーである「鈍色」で塗りなおす事に再決定。
これは思わぬ怪我の功名。初回の施工で無事に上手く塗り終える事が出来ていたら「何か違うな」とは思いつつ流石に違う色で全部塗り直しを決心するまでには至らない訳で、失敗も悪い事ばかりではない。よしよし

11.27.2014

ホテルライクより老舗旅館ライク

最近やたらと目に付く「ホテルライクなインテリア」という謳い文句。
大抵は「憧れの」という枕詞がついていたりする。そうなのか。憧れなのか。
ホテルライクなインテリア。知ってるよ。
壁には白い瀟洒な柄の壁紙とウェンゲの合板、洗面所にはキラキラしたモザイクタイルにこれまたウェンゲの洗面台に置き型の洗面器にピカピカのグローエの水栓。床は落ち着いた柄の毛足の短いカーペットかダーク色のピカピカの合板フローリング、天井埋め込みのダウンライト、ベッドサイドに間接照明。
この辺りをおさえればホテルライクなインテリア一丁あがり。とりあえず高級感あふれる(んだってさ)ウェンゲの合板を多用すればホテルライクらしき見た目にはなるので、ホテルライクな家を建てたい方はとにかくウェンゲウェンゲお洒落なウェンゲと唱えていれば間違いないでしょう。ていうか最近の高めのマンションの内装もこんなのばっかだし。流行ってんだね

高級感あふれるホテルライクなインテリアもそれはそれでいいものだけど、自分が憧れるのは寧ろ老舗温泉旅館のような内装。古びていて決してピカピカではないが、見れば見るほど本当に惜しみなくコストを掛けて作られているのが良く分かる。綺麗な合板一枚べーっと張っておしまいにしている場所なんかどこにもない。張りぼてではない本物の素材だけが長い時を経て醸し出すいぶし銀の艶。

向瀧
向瀧 天井も手抜かりなし。蛍光灯カバーもいい感じ
向瀧
金具屋 これだけ幅広で木目が見事なパインフローリングなんか今日日なかなかお目にかかれない

もちろん予算と戦いながら完成した我が家は惜しみないコストを投下して作られたこうした本物の日本家屋とは比べるべくもないが、古くなるほど愛想を尽かされる家ではなく、古くなるほど魅力が増す家には少しでも近づきたい。あれこれ手を掛けるのはその為かもしれない。自分でやればタダだし。
使い込むほど味の出る木の床もきっとそれに寄与してくれる。あ、ちなみに杉の床とウェンゲの合板は相性最悪なんで。

11.25.2014

漆喰左官(2)敗因分析と対策

壁紙貼りに失敗したなら剥がして貼り直せばいいし、板金塗装に失敗したなら剥離してやり直せばいい。
しかし一度塗った左官壁は剥がす訳にはいかないので、リカバリ手段は上から塗り重ねる以外に選択の余地はない(最終手段として壁そのものを作り直す、或いは二重壁とする手段がなくはないが、いずれも大工事が必要)。
早速次の週末に施工を行うと決めると、再施工の準備と並行して初回がうまくいかなかった理由を分析する。

色々調べてみると、原因は単純かつ致命的な手順ミスである事が分かった。
まず漆喰がゴリゴリとやたら硬くて伸びず塗るのに大変難儀したのは、単に漆喰の練り不足。練り済み漆喰といえども無洗米のように手を加えずそのまま塗れるものではなく、柔らかくなるまで十分に練り直すのが当たり前。という事らしい。
まあそれもそうだよな…何考えてんだろ…

次に、塗る端から漆喰が乾いていってしまった問題は、下地の水引きを止めなかったのが原因。漆喰は塗った端からどんどん下地にその水分を吸収され乾いていってしまうので、施工性を維持する為にこれを食い止めるのが肝。具体的には、塗る前に壁面を十分に濡らして吸水を止めておく必要があった。

うーむやはりローラー塗りとは違うものだなあ。て感心するのが遅すぎる。
要するにリサーチ不足が全て。この辺の軽率さは幾つになってもなかなか改まらないのは困ったもんだ。新井選手よろしく護摩行でもやればいいのかしらん

11.22.2014

漆喰左官(1)初戦敗退

漆喰と下地シーラー、鏝に鏝板が揃った十月の三連休に壁塗りを実施。
まず家具をどかして養生を行い、現在の漆喰壁にシーラーを塗布して下地を整える…
…そういえばローラー塗りを行った際にはシーラーを塗らずいきなり漆喰を塗り付けていた。シーラーは食いつきを良くする為だけでなくアク止めの為にも必須であり、これを塗らずにいきなり合板に塗れば必ずアクが浮いてくるし、石膏ボードはアクがでない代わりに表面の紙がアルカリで侵されて紙ごと剥離してくる恐れもあるという。幸いそのような事態には至っていないが、当時はその重要さに気づかないまま一気にローラーで塗ってしまったのだから無知とは恐ろしい。
シーラー乾燥後二日以内に塗るようにとの注意書きにしたがって翌日に着手。まずは一階の北側の壁、玄関の手前までのおよそ4.5mの壁に8kgの漆喰「白土」を塗る…

妙に変だなー。おかしいなー。

思わず稲川淳二のような呟きが漏れる。
練り済みの漆喰は思ったよりずっとゴリゴリと硬く鏝で押し広げようにもなかなか伸びず、施工性は最悪。
更に漆喰は壁に塗りつける端からどんどん乾いていってしまう。乾いたらそこでおしまい。
何だこれは。
頭にクエスチョンマークが無数に浮かびながら悪戦苦闘すること七時間、塗る予定の面積の三割ほどを残したところで漆喰が尽きる。
これはまずいな。
気を取り直して二階の北壁7.7mに漆喰「薄墨」10kgを塗る。一階の悪戦苦闘がここでも寸分違わず再現され、おかしいなー変だなーと稲川淳二の口真似をしながら八時間もかけて格闘した挙句、壁面の六割程を塗ったところでやはり漆喰が底をつく。
これは大いにまずいな。
振り返れば眼前に広がるのはつぎはぎだらけでボサボサな表面の、塗り壁の味というには余りに酷い仕上がりの洞窟のような壁、それも中途半端な場所で終わっていて…
見事に失敗だ。これをどうすればいいか…いや慌てるなとりあえず一時撤退で対策を考えよう。ていうか疲れた。寝る

11.13.2014

謎が謎を呼ぶ現場

先日のエントリで書いた帰宅途中の工事現場はその後どうなったのか。

8月、灼熱の太陽のもと着工したビル建築工事は始まったその途端に何から何まで仕様が変更となり、
9月、秋の陽射しに照らされた現場は続行しているのかしないのか、
10月、気が付けば建築計画のスケジュール記載が消えて代わりにでっかく「?」マークが書き殴られたホワイトボードに落ち葉が舞い、

そして肌寒い風が吹き抜ける11月。とうとう、

白紙に戻す遣唐使

建築計画は文字通り真っ白に。
これは…

(アカン)

いまだ基礎コンクリートすら打っていない。これは…
どう見ても只ならぬ何かが起きている。何か遺跡でも掘り当ててしまったのか、
それとももしかしてこれはサグラダファミリアのように「建築資金が集まったらその分だけ少し工事、そしてまた資金が貯まるのを待つ」という感じで建てるビルなのだろうか。いやそんなバカな

果たして無事完成の日を迎える事が出来るのか、引き続きこの現場には要注目。(←ただの野次馬根性)



11.11.2014

一階の壁も左官

徳大寺有恒氏死去。中年以降の年代で氏に影響を受けた男性は相当数いるだろうが、自分のクルマ趣味というか自動車観においても福野に次いで大きな影響を受けた人物だったといえる。自動車がすっかり白物家電化してしまった現代においては、氏のように車をもって(恥も衒いもなく)ロマンを語る物書きはもはや現れる事はないだろう。その文章は本業たる自動車評論よりも寧ろ若き日の車仲間や往年の六本木族との交遊を綴ったエッセイや回顧録の方が面白く、粋さを残した当時の遊び人文化※1をどこかとぼけた客観的な視点で描写した文章は興味深く読んだものだった。葉巻と美女とトラッドとスポーツカーを愛し、野暮とミニバンが大嫌いだった氏の冥福を祈る。


* * *

左官で色を変えてみようと思い立ったのは一番面積の大きい二階の北側の壁だが、手始めに一階の北側の壁も左官で漆喰を塗り重ねてみる事とする。これは震災で入ったクラックの補修も兼ねて。
一階の壁に鏝塗りする漆喰の色は「白土」、すなわち色は変えない。二階に比べてシンクやら吊戸棚やらキャビネットやら冷蔵庫やらで格段にモノが多い一階はできるだけ色遣いを少なくシンプルにしたいという事もあるが、一見して同じ色でもよく見ればローラー塗りと鏝塗りで違う質感の壁が混在するのも面白そうな気がするし。という事で今回のDIYは、一階と二階のそれぞれ一番大きな壁一面の左官工事というなかなかに大掛かりなものとなった。


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※1 テレビすら普及していなかった昭和30年代の東京で学生の身分で外車のスポーツカーを乗り回し、麻布や六本木を遊び場に出来た遊び人は紛れもなく良家の子弟。

11.02.2014

壁の色を変えてみよう

我が家の内壁には全て漆喰を塗った。
とはいえ、ローラー施工のお手軽漆喰。何しろ引渡しから入居まで与えられた工事期間は四日間、とにかく時間がないので難易度が低く作業性が良いローラー以外の選択肢はなかった。
ローラーで塗れる漆喰だからニセモノだと言う訳ではないが、本来漆喰は左官で塗るものだというのも事実。時間が十分にあれば自分もローラーでなく鏝塗りを選んだだろう。
心の片隅に僅かに残ったその蟠りの他に「出来れば白以外の色も塗ってみたかった」というこれまた長年燻っていた思いもあったのだが、いずれも「漆喰の上に漆喰は塗れない」という常識?で棚上げに。

しかしふとした機会に調べてみたところ、漆喰on漆喰については厳密には
「そのまま重ね塗りは不可、下地を整えれば可」
が正解だという事が分かった。
確かに漆喰の上にただ漆喰を塗っても付きが悪く、無理に塗ってもすぐに剥がれてしまう。
だから表面を漆喰でなくすればいい、つまり食いつきのいい専用シーラーを下地として塗布し、その上に塗れば問題ないのだと。
あ、なるほど。
それを知って長年燻っていた種火が勢いづき、「一面の壁色を変えてみよう」と決めたのがこの夏。

色漆喰は普通の漆喰に絵の具を混ぜても作れる。しかし色彩センスに今一自信がないのと、自作の色漆喰は再現性がネックになると踏んで既製品を使用する事とした。
色漆喰はローラー塗り漆喰の時に選んだメーカー「カラーワークス」のものが最もバリエーション豊富で色のセンスがいい。加えてここの漆喰は鏝用でも練り済みなので使いやすそうだ。
しかしPCのディスプレイに表示される色はあまりあてにはならない。
まずは実物を見なくては。

と言う事で、7月初めの週末を使ってカラーワークスの本社兼ショールームに行ってみる。
前回行った時から四年半、その間にショールームは用賀とは全く様相を異にするディープな下町、東神田に移転していた。
家賃の低さからか最近はいかにも目黒や下北沢近辺にありそうな雑貨店やアパレル、飲食店が東東京の下町を選んで出店する例が増えている。同社のショールームビル一階にもオサレなカフェ&バーが入店し、道を挟んだ向かいにもオサレ家具屋が店を開いている。

カラーワークス本社「パレットビル」塗料屋さんらしく壁面がお洒落
同社のhip漆喰サンプルは三階ショールームにあった。検討のために許可を取って漆喰各色のサンプルを撮影。

「鈍色」「青磁」
「枯茶」「藤鼠」
「薄墨」「白土」
この他に「灰桜」と名付けられた桜色。
どれも微妙な色遣い。「藤鼠」と名付けられた墨色を第一に考えていたが、抹茶のような色の「青磁」も好ましい。
結局この場では決めきれずに帰宅して改めて検討の結果、淡いグレーの「薄墨」で行こうと決定。

10.30.2014

杉並の家R

去る18日に行われた杉並の家Rの見学会。
S氏にお声がけいただいて参加する事にしたのはいいが、当日重なった我が家の工事の準備に手間取ってすっかり出発が遅くなる。さらにバイクで赴いた道中でアクシデントが重なり、お宅の前に到着した時点で終了時間ぎりぎり。
と思いきや、ここで終了時間をなんと一時間(遅く)間違えて覚えていたことが判明。

…えーと。つまり、到着の時点で既に終了時間を一時間近くも過ぎていると言う事ですか。そうですか。そうですね。そうですよね。そう思ったんですよ(意味不明)

途中のアクシデントといいこれといい、これは神様がここに来るなと言っているのに違いない。
そうだそうに違いない。帰ろ帰ろ
と現実逃避しつつ、降りたばかりのバイクにふらふらと近づいて一旦はハンドルに手をかけたものの、連絡なしでブッチするのも社会人としていかがなものかと思い直して恐る恐るS氏に電話。
遅えよバカ帰れと言われるのを覚悟していたら、なんと家主のSさんご一家のご好意でこんな時間から見学させて貰える事になり(ああやっぱりS氏のクライアントはいい人だ)、呆れ顔で迎えに来たS氏に続いて恐縮しながら門をくぐる。
玄関で靴を脱いでいると、道中のアクシデントで脚にふりかかったビールの臭いがぷーんと立ちのぼってさらに恐縮具合に拍車がかかる。バイクで来てるのにビール臭いおっさんて危なすぎだろ。もうどんだけアウトローなのかと。その節は大変失礼しました。色々と。


杉並の家R」は、二世帯住宅の家主ご一家が住まわれる空間のみリフォームという聊か変則的な事例。
S氏の手がける家でおなじみの「杉の床」と「白い壁」で出来た柔らかな空間の中で異様な存在感を放つのが、ホームエレベータを撤去して出来た大空間に設けられた廻り階段。下から上までの壁面が全て杉板で覆われ、しかもその杉板は壁張り用の薄い板材ではなく分厚い床材をそのまま用いているのでその重厚感が凄い。あんまりないねこういうの

印象としては、白い家の中央を上下に貫く杉のトンネル。
杉に囲まれた異空間を回りながら上っていくと、壁も天井も真っ白い明るい空間がぱっと開ける、といったイメージ。これが壁面全部だと山小屋か!と突っ込まれるところ、この一箇所だけ集中して杉が投下されているのでその存在感がより際立っている。

杉のトンネル

リフォーム後3年を経過しているので柔らかい杉の床はそれなりに傷つき、また変色している。そのボコボコ具合はよく撮れているS氏の写真でご確認いただくとして、杉板はこうなってこそ味が出てくるもの。床に少しの傷も付かないように定期的にガラスコーティングしている人には理解できない「味」かもしれないが、このラフな感じはいいと思う。
またあちこちに設けられたピクチャーレールから幾つも額絵が吊り下がっていたり(壁に絵を飾る家はあまり多くない)、先代から受け継いだ旧い振り子時計を大切に手入れして現役で用いていたりと、そこかしこにセンスの良さと居心地のよい内部空間とするために心を砕いている様子が伺えるのがとても感じがいい。
やはり実際に人が住んでいる家を見学するのは面白いし為にもなる。なかなか出来る事ではないけれど。



S家を辞するとトンボ帰りで工事開始!

10.09.2014

建築設計事務所の真価

先日の大雨で大分落ちてしまったが、夏櫨は今年も見事な紅葉を披露してくれる。
下の葉から徐々に紅葉が進んでいくのが面白い

画像加工一切なし

閑話休題、最近目にした注文住宅の失敗エピソード。これが釣りじゃないかと疑ってしまうほどあり得ない事例の連続。
悪い噂は広まるのが早い。こういう生々しい話を耳にしたなら、いわゆる注文住宅に二の足を踏む人が少なからずいるのも頷ける。地場の工務店では心もとない、大企業のハウスメーカーのプランが一番安心できるという考えに至っても不思議ではない。何せ一生物の買い物なのだ、決して失敗は出来ないと慎重に考える人ほど創意より安心を取るだろう…

しかしよく読むと、このケースの一番の問題点は管理者がいない事であるのが見えてくる。
正確に言えば管理者はいない訳ではない。その役割は施工する工務店が担っている。でも自分でやって自分でチェック、それってチェックになってないだろうと。勿論しっかりと管理する優良な工務店もあるのだろうが、そうであるかどうかは外から眺めるだけでは分からない。ハズレを引くとこんな悲惨な結果が待っている。
設計事務所に頼む一番のメリットはそれ。
図面を引くだけなら工務店にも出来る。しかし工程品質を厳正にチェックできるのは設計事務所の他にいない。能力の問題ではなくて立場の問題。素人の施主では管理者は務まらない、これは能力の問題。
まあ設計事務所にも当たり外れはある(のだろう)が、注意しなければいけないのはカッコいい家を作る能力ときちんと工程の品質を管理する能力は完全に別物である事。TVで華々しく紹介されたものの、欠陥住宅を拵えて施主から訴えられた「匠」も実際にいたりする※1
結局はこれまで数十年生きてきた中で培った、己の「人を見る目」を信じるしかない。それも難しいけど。


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※1 最悪のケースはこの元GPライダーの例。このブログの毎日のPVで一番多いのは未だに彼の悪口を書いたエントリだったりする。吐き気を催すほど酷い内容なので、二日酔いの人はリンク先を見ないほうがいいかもしれない。

9.20.2014

ようやく涼しくなったので家作り再開

一面だけ壁の色を変えてみたい(それも鏝塗りで)という考えが随分前からあって、

動機としては現在の白一色の壁に変化をつけて雰囲気を変えてみたいのが半分、
塗り壁とはいえ全てローラー塗りなので一度は漆喰の壁らしく鏝塗りをやってみたかったのが半分。笑

当初の考えでは艶消し黒の漆喰を上塗りしようと考えていたが、施工前のテストとして黒い模造紙を20枚ばかり取り寄せて塗り替え予定の壁一面に貼ってみたら、これがもう半端でない圧迫感。壁に沿って歩く時など本当に壁側から押されているような錯覚すら覚える。
黒のような強い色はあくまでアクセントとして、短辺の小さな面積の壁に用いるべきものなのだ。今回塗る予定なのは我が家で一番広い壁で、これを真っ黒とするのは刺激が強すぎる。アクセントにしては大きすぎ
黒色でないならどうするか。カラー漆喰として他にある色はグレー・グリーン・ブラウンにピンク。
うーむ。ブラウンピンクは床色に合わないので却下。普通に薄墨色くらいの浅いグレーが一番合いそうな気が。緑茶のような色のグリーンも合わないではないが…

9.11.2014

「条件をのむなら売ってあげます」って考えてみれば超上から目線で何様だっていう

プレジデントは建売/売建に恨みでもあるのかという感じで、アンチ建売住宅の次には建築条件付土地をディスる記事。悪徳業者だって?ふむふむ

建築条件付土地では売主が施工業者が決めている?
見積もりが折り合わない場合もある?
フリープランがフリーでない?


そんなの当たり前じゃん。


建ててから売るか売ってから建てるかの違いこそあれ、建築条件付土地は要するに建売住宅と同じ(だから売建ともいう)。建売と同じく上物は画一仕様の大量生産でコストをぎりぎりまで下げて土地と抱き合わせで売る事で利益を出す仕組みなのだから、仕様が決まっていて買主のわがままが通らないなんて当たり前。フリープランといってもドアを変えられますとか壁紙を変えられますとか、せいぜいがこの二部屋をつなげて一部屋に出来ますとか間取りはこの二パターンから選べますとか言う程度の「フリー」でしかなくて、壁は珪藻土にしたいとか床は無垢の木を使いたいとかここに水周りは一箇所に集めたいとか、注文住宅なみのカスタム仕様なんかいちいち聞き入れていたらとてもあの値段では供給できない。建築条件付土地の「モデルプラン」はえげつないくらい安いからなあ。そりゃ仕方ない。世の中にうまい話はないって事ですよ。

ていう事くらい承知の上でみな購入するものかと思っていたが、こんな言わずもがなの事を今頃ものものしい見出しを付けて記事にしたりして…大丈夫かプレジデントは。

しかし少なからず家にこだわりを持ちたい人にとって建築条件付土地は本当に悩ましい存在であるのは確かで、「好きな家を建てる」事を志した時にまず立ちはだかるのがこの「建築条件の壁」。
土地物件の検索サイトで「建築条件なし」をフィルタ条件に加えた瞬間、それまで表示されていた物件数がおよそ十分の一にまで激減して愕然とするのは注文住宅あるあると言っていいくらいの話で、条件のいいところほど売建を手がけるディベロッパーが売りに出る前から抑えてしまっているのだから、特別なコネでもない限り市井の一個人の情報力では到底太刀打ちできない(土地の販売だけで十分利益が出る億単位の高額物件であればさすがに建築条件は付かなくなるが、そんなものは遺産が転がり込んだラッキーマンかベンチャーの創業者か成功したスペシャリスト以外にはハナから縁がない)。
これといった才も運も親から相続した土地も持たない我々一般庶民が都内で好きな家を建てたいのなら、土地探しからいきなりハンデを背負ってのスタートとなるのを覚悟しなければいけないのが現実。結果として、土地探しの段階で何割かは家作りを諦めてしまうであろう事は想像に難くない。

専ら売り手に有利となるだけの建築条件付土地という悪習(と言い切ってしまう)がなんでここまで蔓延っているかと考えると…とどのつまり、消費者が文句言わずにそれを受け入れている=それで良しとしているから、に他ならない。結局ごく一部の「金持ちか、土地持ちか、家マニア」以外の人が「好きな家」を現実のものにするのは難しい、というお寒い現状が見えてくるような。


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※ 幾らか購入代金に上乗せする事で建築条件を外して貰うという裏技もあるにはあるが運任せで当てにはならないし、いい土地である程交渉が成立する確率は低くなる。わざわざそんな面倒くさい客を相手にしなくても売れるから

9.06.2014

欠陥住宅?

建売住宅の8割は欠陥住宅であるというなかなかにショッキングな記事。
それなりに責任と立場のある方の記名記事なので、無責任な煽り記事と言う訳でもないだろうが…


本当かなあこれ。


と思うのには理由があって、
まず三年前の震災において、日本のどの地域においても(東北地方ですら)家屋が多数倒壊したという報道は皆無であるという事実。建売住宅の大半が本当に構造的に欠陥がある住宅なのであれば、此度の大震災で倒壊家屋が相次いで発生していなければおかしい。
次に融資の問題。現金払いで住宅を購入できる人は稀で、殆どは融資を受けて住宅を購入する事になるのだが、都内においては多くの建売住宅は三階建て。
三階建ては建築基準法を満たした構造であると役所の建築確認を受ける必要があり、そのお墨付きがなければ少なくとも住宅部分の融資は受けられない。融資が受けられなければ土地とセットで販売される建売住宅は商品として成立しなくなる訳で、建売住宅はたとえ什器や内外装や外構にどれだけ手を抜いたとしても、家の構造そのものに手を抜く事は出来ない。理想的な構造ではないにしても、少なくとも建築基準法上最低限クリアすべきラインはクリアしている筈だ。
担保なくして銀行は金を貸さない。欠陥住宅に担保価値はない。価値がないのを隠蔽し価値があるように見せかけて銀行から金を引き出す、これは詐欺という立派な犯罪。発覚すれば検査会社もディベロッパーも経営幹部は軒並み逮捕を免れないし、会社が存続する事も許されまい。手抜き工事で多少経費を浮かせる事と引き換えにするにしては大きすぎるリスクではないか。商売の為とはいえ、そんな犯罪を躊躇なく冒すものだろうか。

建築業界の人間ではない素人が思い浮かべる疑問。おかしいなあ妙に変だなあと稲川淳二のようにぶつぶつ言っていたら、この記事を真っ向から否定するカウンター記事を見つけた。
うーん?どっちの言う事が正しいのだ?

9.01.2014

恐怖は日常にこそ

蝉の一生に思いを馳せる方が怖いかも

駆け足で去っていってしまった今年の夏に気が付いた自身の変化。それは


ホラー映画が怖くない


暑くて眠れない夜に少しでも涼が取れるかと思い怖いと評判のホラー映画を片っ端から見まくったが、

全然怖くない。


うーむ。


原因は分かっている。
この歳まで生きると知ってしまうのだ。
幽霊なんかより生身の人間の方がはるかに怖いという事を

実際、自分にとっても乱暴な運転をするタクシーや車道に飛び込んでくる向こう見ずな歩行者の方が余程怖い存在で。理由もなくいきなり生命が危機に晒される恐怖に比べたら、ちゃんとした理由に基づいて、しかも自分の縄張りの中でのみ登場人物をあの手この手で追い回す映画の幽霊なぞ律儀にすら思える訳で。
怖くないもんだからあざとい演出とかおどろおどろしいメイクとか余計なところばかり気になって、なおさら怖くなくなるという悪循環。呪怨とかリングとか、あれ系のホラーは特にダメ。伽椰子も貞子も出オチにしか思えない。子供の頃は怖かったエクソシストとか、今見たらニヤニヤ笑いが止まらないんだろうなあ。朝のラッシュの駅で歯を剥き出さんばかりの顔で肩をぶち当ててくるサラリーマンの方が余程怖い。

昔の写真を見ても「あの頃に戻りたい」とは一度も思った事がない程度には、自身が歳をとる事については悲観的ではない。それでも、ホラー映画の一つも素直に楽しめなくなってしまった角質化した心に気が付くと、歳は取りたくないねえという年寄りくさい台詞が口をついて出てしまう。

8.24.2014

理想の墓石

盆の墓参りで墓石を洗う度に考えるのがメンテが楽な墓の形状について。
車を買う時も家を買う時も、買えるかどうかよりその後維持管理していけるかどうかが気になって仕方がない性分としては、汚れのたまりやすい通常の墓石の形はどうも気に入らない。


こういう通常の墓石に無数に存在する凹凸や隙間に一年間で溜まる汚れや苔は相当なもので、桶で水掛けてブラシで擦ってなんて幾らやっても埒が明かない。ケルヒャーでも持ち込みたいところだが、墓地にはあいにく電源がない。掃除する人の苦労を考えていない形状だよなとぶつぶつ文句を言いながら今年も猛暑の中を行ってきたのだが、理想的には隙間のない一体式で角や凹凸がない、スライムのような形状の墓石がベストではないかと思う。名前は彫るのではなく表面にレーザー転写でもすればなおよし。

という持論に最も近い、素晴らしい墓がまさか同じ墓地に存在するとは。



これは凄い。本体に用いられた御影石は僅かに三つ、全て表面は鏡面仕上げに磨き上げられて凹凸も彫り文字もなく、汚れの溜まる箇所が殆ど見当たらない。水ぶっ掛けてタオルで拭けば手入れ終了、墓掃除に五分とかかるまい。これなら墓参りする人も大助かり。
表にも裏にも名前が一切刻まれていないのだが、考えてみれば郵便物が届くでもない墓石は家族や親族縁者に分かってもらえればそれで十分な訳で、縁者にしてみれば同姓も多い普通の墓を探し回るより遥かに見つけやすい。つくづくよく考えられた墓だと思う。建てたのはさぞかし気の利いた性格の人だったのだろう。


8.20.2014

仕様変更の怪

近所の大通り沿いにあった小さな空き地が金網の柵で塞がれ、中では土が掘り返されて建築工事が始まっている。
柵にかかった建築計画の看板には、RC造8階建ての共同住宅を建築するという表示。ワンフロアワンルームのいわゆるペンシルマンションとはいえ、土地の広さは我が家と大差ない土地に8階建てを建てられるとは、さすがに大通り沿いの商業地域は容積率が高い。

前を通りがかるたびに柵の隙間から工事の進捗が見える。根きり工事が終わって捨てコンクリート打ちが完了した頃、柵に掛けられた建築計画の看板に異変が発生しているのに気が付いた。



延床面積を変更、階数を変更、高さを変更、基礎工法を変更、完了予定月を変更、
ついでに設計者も変更。
変更がない表示は敷地面積とRC造の二項目だけ。
全くの別物…これまでの表示は何だったんだ。ここまで変更されていると、掲げる看板を別のビルのものと間違えていたのではないかと思ってしまう。良くある事なのかしらん。
もう基礎工事が始まっているのにこんな事して大丈夫なのか。それとも建築会社がずぼらで掲示を怠っていただけなのか。あるいは本当に他のビルの掲示板を間違って掛けてしまって、取り替えるのも面倒くさいから訂正を書き入れただけなのか。いずれにしても業界の常識はよく分かりませんなー。

8.16.2014

靖国

今年も会社帰りに靖国。まあ帰宅ルートでもあるし、親族も祀られている事だし

夜間は閉門

いつも思うのだが、意外に若い人の姿が多い。夜は閉門して境内前には行けないが、門の前で手を合わせては立ち去っていく。戦中派と思しき老人か中年以下。その中間はあまり見ない。
自分たちが子供の頃と違い現在は情報が手に入りやすい環境が整っており、日教組にも昔年の勢いはない。もしかして自分達の世代より若い世代の方が妙な思想に毒される事なくニュートラルに物事を見る事が出来るのかもしれない。まあ最悪なのはいわゆる団塊世代であるのは論を待たず、この辺りが死に絶えた頃にようやくニュートラルな視点で歴史を振り返る環境が整うのかもしれない。

閉門の前で拝む参拝者
それを撮る人

8.10.2014

曇りのち雨のち豪雨のち晴れのち豪雨のち晴れのち豪雨のち晴れのち豪雨←イマココ

日本の家に庇は重要

分単位で変わる天気に合わせて鳴いたり鳴き止んだりまた鳴いたりしている蝉も必死だなと






8.06.2014

2月25日 Kraków

夏は嫌いなのに暑くなるほど体調がよくなるこの不思議。
そういえば夏風邪は中学生以降ひいた記憶がないし、噂に聞く夏バテも未だ体験したことがない。夏バテって食欲落ちて痩せる事?全然痩せないどころか下手したら太るからなあ
認めたくないがこの高温多湿不快指数100%の環境が実は身体に合っていると言う事なのか。確かにこれだけ湿度が高ければ喉を痛める恐れはないが

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英語発音ではクラコーとなるポーランド第三の大都市クラクフ(óはUで発音する)は、17世紀にワルシャワに遷都するまではポーランドの首都であった古都。映画ファンにはシンドラーのリストの舞台となった街として、カトリック信者にはヨハネ・パウロ二世の出身地として、WWⅡ独軍オタには悪名高い髑髏の軍団、第三SS装甲師団(トーテンコップ)の本拠であった街としても有名。

長らく首都であった古都であり、戦争で焦土と化した国土の中でも奇跡的に被害を免れて貴重な文化財が保存されているなど、日本における京都との共通点は多い。尤も戦火を免れた経緯は全く違い、強力なSS師団を擁するクラクフがイガグリなら京都はショートケーキの苺※1という対照的な理由でそれぞれ最後まで手をつけられなかったと。


新市街から旧市街を望む
旧市街入口前のバルバカンと呼ばれる円形の砦は大変貴重な旧跡らしい。周囲には濠
旧市街入口

緯度の高い欧州では冬の陽は釣瓶落とし。ヴロツワフ出発から5時間、クラクフに到着する頃には既に陽は大きく西に傾き、宿に荷を置いて街に出ると程なくして夜が訪れる。博物館や美術館あるいは各種観光施設は冬季は閉鎖しているか、開いていても16時にはクローズしてしまう。シーズンオフに旅するデメリットはこれ。



クラクフ城地下の墓所は有名な心霊スポットらしいのだが開館時間には間に合わず。残念


破壊を免れたシナゴーグ
クラクフの旧ユダヤ人街は大学に近く、つまり行きかう学生が多く、若者向けのカフェやバーが並ぶオサレスポットと化している。ふらりと入ったオサレカフェで「イズラエル・スタイル」とメニューに記されたコーヒーを注文してみると、トルココーヒーのような銅のポットに入った、やたらとシナモンくさく妙な甘味がついたコーヒーが出てきた。飲む。うーんマズイ



「イズラエル・スタイル」コーヒー

そしてカフェを出たあたりで突然、懐刀のニコンDfがぶっ壊れる。厳密にはまずAFが合焦しなくなり、レンズの故障かと思って付け替えたりしている内にとうとうシャッターが下りなくなる。
明日にはオシフィエンチムに行く予定なのに何と言うことか。遠いクラクフの街にニコンショップがある訳もなく、万事休す。残りの旅路はiPhoneだけが頼りとなってしまうのか…

間違った日本趣味 
メーカー不詳の商用バン

突然動かなくなったカメラに悪態をつきつつ駅まで戻る。
本日最後のタスクは、駅隣にあるバスステーションから出発するオシフィエンチム行きの長距離バスの時刻表を確認する事。カメラが動かなくなろうと、限られた日程を無駄に費やすわけにはいかない。
予定通り明日行こう

最近リニューアルされたクラクフ駅は垢抜けない近代的なショッピングモールと一体化している

長距離バスステーションはクラクフ駅に併設
オシフィエンチム・ムゼウム行きのバスに乗る。夕刻には閉館する事を考慮すると実質的に一日三便

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※1 「米国人は京都の文化的価値を理解していたから空襲の的から外したのだ」という我々の耳に甘美に響く俗説には残念ながら何ら根拠がない。史上初めて使用する原子爆弾の効果を正確に測定するためには「破壊されていない大都市」が必要で、京都はそれにうってつけであったというだけの事。投下直前までターゲットの筆頭は京都であった事は紛れもない事実。

7.25.2014

サトサトナイト

S氏主催の「住んでからのオープンハウス」、今回はリフォーム後一年を経過したT家で開催。駅から続く上り坂の先にある住宅街の、更に階段を上がった先にあるのがオーナーTさんが一棟まるごと買い上げてその一角を自宅とした集合住宅。名付けてsato*sato

sato*satoから望む街並み
集合住宅の一階と二階の二世帯分を自宅に使用していたsatosato、小さな部屋が無駄に多く使い勝手が悪かったのをゆったりと広く明るい空間に仕立て直した、というのはS氏の解説通り。
そしてここでも主役は床と壁にふんだんに用いられた杉板。今回見学された三組(九名)の方々にも杉の床はおしなべて好評。安定の人気。
satosatoの床は全面張替えではなく一部はリフォーム前の建材の床板がそのまま残っていたので、冬であれば見学者は更に杉の床の良さを実感できた筈だ。踏み比べれば足裏から伝わる冷たさが違う。

リビング壁には白く塗った杉板
インテリア好きのT夫人のセンスが随所に光る

飴色に使い込まれた10年物のSTOOL60(四本足)にも注目

見学会終了後には初めてお会いする風樂房のらっきょさんご夫婦、施工したみどり建設社長と共にTさんが腕をふるったBBQをご馳走になったのだが、satosato家は擁壁に囲まれ、さらに擁壁の上にも家がないのでどんなに煙を出しても誰からも文句が出ないという、正にBBQにうってつけの絶好のロケーション。住宅密集地の狭小敷地に建つ我が家ではBBQなど望むべくもない事だから、これは強烈に羨ましい。
土地探しや家探しを続けていると往々にして「広さと値段と駅からの距離」だけで手っ取り早く評価する癖がついてしまいがちになるが、周辺環境や立地などをひっくるめて「我が家」であるとしてマクロに評価する事を忘れてはいけない。特に家族持ちや趣味人は。

どんなに騒いでもウルサイと言われない周辺環境は子育てにうってつけ

しかし肉も魚も野菜も、なぜ炭火で焼くとあんなに美味しくなるのか。
そしてTさんはなぜあれほどカエルに色めき立つのか。
謎は解けないまま夜は更けてS氏とsatosatoを辞去したのだが、最後にBBQ会費を納め忘れるという痛恨のエラー。
大変失礼致しましたこの次お会いする時には必ず(私信)


家の内部に設えられたレトロな小窓がお気に入り