ある晩帰宅すると、家の基礎の前のわずかな地表部分にかがみこんでなにやらごそごそやっている男の姿。
見るからに怪しい。
どうしましたかと声を掛けると、
「すんません…いやウンコしちゃって…」
はぁ?
「すぐ片付けるから…すんません」
といいつつペットボトルの水を掛けたりコンビニ袋を取り出したり。
見回しても辺りには誰もいない。こいつは…
(そういえば随分酒臭い…。泥酔して脱糞する人間の話は聞いた事があるがこれがそれか…目にするのは初めてだな。しかし何だってこんなところにウンコしてんだこいつは。我慢できないにしてもここにするこたあないだろう。困ったな。ていうか何かむかついてきたぞ。怒るべきなんだろうなあ。いや家主として怒らないわけにはいかないだろう。ここは一つ怒っておかなくては。えーとでも何て言って怒ればいいんだろう。『家でウンコしてんじゃねえよ!』。いや家でウンコするのは普通か。『他人の家でウンコしてんじゃねえよ!』。いや家というか土地だから『他人の土地でウンコしてんじゃねえよ!』。こんなとこかな。言葉だけじゃ弱いかな。でもウンコいじってる人間にあまり触りたくもないしな。うーん)
東京大学物語風に言えばここまで約2.5秒。
怒るタイミングをうかがっていると後ろに何かの気配。
振り向くと、足元から自分を見上げるつぶらな瞳が二つ。
ノーリードで散歩していたらしい犬がどこからか戻ってきて自分を見上げている。
こいつか。
まあ犬では仕方ない。
ややあって糞の回収を終えた飼い主は
「いやすんませんでした」
と言い残して犬とともに坂を降りて行く。
とりあえず臭い消しの為に改めてホースで水を流し、念の為酢を掛けておく。
まったく紛らわしい。
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