3.03.2017

おろしや国一週間(5)12月12日 駆け足で二度目のクレムリン

失意を抱えドルゴプルドニからモスクワに戻ると冬の太陽は既に大きく西に傾いている。最後の日がもうすぐ終わることに焦りつつクレムリンに直行。チケットを購入して内部に入ると駆け足で正教の寺院を回る。


入口のスパスカヤ塔をくぐると、右手に6000人収容のクレムリン宮殿。
中央てっぺんに双頭の鷲の国章※1が金色に輝く。ガラスとコンクリートがお洒落なモダン建築。



クレムリン宮殿を抜けると葱坊主屋根の正教協会が立ち並ぶ。
イワン雷帝他皇帝の納骨堂を兼ねているアルハンゲリスキー大聖堂、ウスペンスキー大聖堂、ブラゴヴェシェンスキー寺院に高さ81mのイワン雷帝の鐘楼。
















寺院の内部に入ると各国語ガイドが置いてあるが、ここでこの国における日本のプレゼンスの弱さを目の当たりにする。どういうことかというと、


中央に英語版。それを囲む右上から時計回りにロシア語版、中国語版、スペイン語版、イタリア語版、ドイツ語版、またロシア語版、仏語版、韓語版。終わり。
日本語版はない。(少なくとも観光業においては)この国でアジアといえば中国、そして韓国。日本など三番手以下なのだ。

日本にいて「海外が日本を絶賛!」みたいな気持ち悪いバイアスがかかったインターネッツ記事ばかりを目にして勘違いしちゃいけない。日本が大きな顔をできるのはあくまでアジア限定の話であって、欧州では今も昔もてんで存在感がない。日本のポップカルチャーが人気といってもあくまでオタクのサブカルとして人気という話であって、いわゆる一般的な人気とは程遠い※2。単に認知度で言えば中国の足元にも及ばない※3。そんなどこの馬の骨みたいな連中が遠くから「ホッポーリョードカエセー」とかキャンキャン吠えたところでタフなロシア人が相手にするわけないよね。というのを肌で感じるのだ

隣接して大統領府。主は日本出張中
ロシア国旗が翻る


世界最大の鐘


出たり入ったりしているうちにとっぷり日が暮れた。閉館時間になったので急いでクレムリンを後にする

再びクレムリン宮殿の横を抜けて

お帰りは赤い星の光るスパスカヤ塔から


クレムリンおしまい!

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※1 双頭の鷲はローマ帝国のシンボルであり、またかつて存在した神聖ローマ帝国、プロイセンとオーストリア帝国の国章でもある。つまり現代における(西)ローマ帝国の正当な後継国というのがロシアのアイデンティティ。その一方でルーマニアもまた国章と国旗に双頭の鷲をいただき、国号Romaniaからして我こそはローマの後継国と声高に主張している。ただしこっちはビザンティン帝国から受け継いだ東ローマ帝国の流れ。なので現在も世界には二つのローマ帝国(の後継国)が存在する。
※2 村上春樹だけは別で、若者中心に一般的な人気を博している。それともう一人、この国で意外な日本人著者が大ブームになっているのだが…それはこのあとのエントリで
※3 今回の旅を通しても同胞の旅行者を目にした機会はたったの二回、人数で言えば三名。中国人は軽くその100倍以上は見かけた。日本人にとってロシアは今でも近くて遠い国。もっと行こうよロシア。怖くないから

3 件のコメント:

  1. 北の国のモノクロの世界に輝く「金色」・・・宗教や権力や、いろいろ意味はあるだろうけどそれは別にして、強烈に心惹かれますね。赤い星に一気に時代が飛ぶ感じを受けます。

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  2. 多くは16世紀から17世紀初めの建築です。関ヶ原の戦いの頃に高さ80mを超える石造りの望楼を建築していたのがすごい。絶頂期のロシアの国力はヤバいです
    ちなみに新潟県でこの高さを超える建築物が建てられたのは昭和48年…

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  3. ほんとにきれい、紙芝居みたいです、パチパチ

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