またしても深夜のラーメン屋前で見かけた珍名車。
今度はアルファSZ。
90年代以降のアルファロメオはプラットフォームをフィアットと共通化し、新モデル155(チェントチンクアンタチンクエ)もティーポのシャーシを用いて生産された。エンジンもアルファ伝統のアルミブロックからフィアットの鋳鉄ブロックに、駆動方式は当然FFで、口さがないファンは155など本物のアルファじゃないなんて非難したものだが、さらに何年か経つとGM(オペル)のエンジンになってしまうのだから腰上部分がアルファ製であった155の直4エンジンははまだマシというもの。結論から言えば。
このSZ(エッセゼータ)は155の先代にあたり最後の純血アルファと呼ばれたスポーツセダン75(セッタンタチンクエ)のシャーシにツァガートがFRPボディを架装して1990年頃に1000台程度だけ限定生産されたモデルで、縦置きされたアルファ純正のアルミブロック3リットルV6エンジンは210馬力を発生。今となっては3リットル210馬力なんて寧ろ控えめともいえる数値でこの車も見かけほど速いわけではないが、アルファのV6をドライブすると馬力なんて大した問題ではないという事が身に沁みてわかる。かつて自ら所有したアルファGTVは鋳鉄ブロックV6を横置きで搭載していたのだが、気持ちよさにおいて未だにあれに匹敵するエンジンにはお目にかかったことがない(出来るものなら今の車にエンジンだけ移植したいくらい)。
このSZをドライブした経験はないが、アルファ純正のV6であればさらに気持ちのいいエンジンであろうことは想像に難くない。アルファV6搭載車はエンジンがその価値の全て、こればっかりは体験してみない事には分かるまい。
「イル・モストロ(ザ・モンスター)」とあだ名されたツァガートのボディは21世紀の今日においても一度見たら忘れない強烈なインパクトで、造形的にも通常のスポーツカーのセオリーと逆なAピラーの立ち上がり※1など興味深い。FRPボディのチリはよく見ればあちこちで合っていなかったりしていかにもイタ車クォリティなところが玉に瑕※2だが、この塊感の前では細けえ事ぁいいんだよと言いたくなる。さすが名門カロッツェリアのツァガートだなあ…というのはありがちな誤解で、この異形のボディをデザインしたのは実はツァガートではなくフィアットのデザインセンター。もっとコンサバにデザインしたツァガートはコンペに敗れ、その結果製作のみ請け負う事になったのだ。
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※1 背を低く見せるために通常はAピラーの立ち上がりは角度が小さく、ルーフに向かい徐々に大きくなってくるのがセオリー。しかしこの車は逆に立ち上がり部分で最も角度が大きく、徐々に寝ながらルーフに至る。
※2 かつて目黒に存在したイタフラ車ショップ「グースネック」のセールス氏が「あんなもんプラモデルみたいなもんですよ」と酷評していたのが記憶に残っている
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