11.30.2014

漆喰左官(4)リターンマッチ

再度準備を整えて迎えた次の週末。
再度シーラーを塗布すると杉並Rの見学会へ。帰宅すると早速作業に取り掛かる。
今度は開封した漆喰をいきなり鏝板に盛らず、100均で買ってきた柄杓を突っ込んで練って練って練る。少量の水を加え、さらに練って練って練る。練るうちに漆喰からはゴリゴリ感が消え、徐々にクリームのような風合いに変化していく。これだ。
頃合を見計らって鏝板に盛り付けると、スポンジで水浸しに濡らした壁に叩き付ける。鏝を使って下から上に、右から左に、左から右にと抑える。
漆喰は前回とは比べ物にならないほどよく伸び、扱いやすい。そしてなかなか乾かない。おおこれだ。

手応えを確かめたところで、後は最後まで一気呵成。というか左官工事が他のDIYと違うのは中断が許されないところで、途中までで終わってその後再開した場合は塗り足した継ぎ目の跡が不自然に残ってしまうので、一度塗り始めたら否応なく一気呵成にやり遂げるしかない。持ち場を離れられるのはせいぜい十分、イナフではなくテンミニッツ。トイレも食事もメイク落としもおむつの交換もその間に済ませるのだ。
リターンマッチは順調に進む。とはいえ素人の腕前では鏝で抑えれば抑えるほど鏝跡が残ってしまうので(かといって抑えなければ強度が出ない)、早々に綺麗に仕上げるのは諦めて鏝ムラ仕上げらしく見せる方向に切り替える。しかしどんな仕上げも自由自在に鏝を操る左官職人はやっぱりすごい。素人ではとても真似できない技術は高い工賃を取るだけの事はある。

一階北壁ぬーりぬーり
一階北壁、塗り終わり翌日。乾ききっていないのでまだグレー色
続いて二階北壁ぬーりぬーり
薄墨色に鈍色を重ねてぬーりぬーり
一番奥に辿り着いたら終了

今回は前回と比べて作業時間もぐっと短く、一階は四時間、二階は六時間で完了。人一倍不器用な自分でこの時間なので、器用な人であればこの半分程度でやり終える事が出来るだろう。いや左官も楽しいね。疲れるけど。
表面は荒々しく波打ち、艶もあったりなかったりとどこまでも素人丸出しの拙い壁面ではあるが、差し込んだ西日に浮かび上がる鏝跡の陰影は自分にとってはとても好ましい味となる。特に二階に塗りなおした「鈍色」の、仄かにグリーンを含んだ独特のグレーの色合いはとても気に入ったので結果オーライ。幸せなDIYの秘訣はあくまで評価尺度を自分自身に置く事。

「鈍色」乾くとこんな色

しかし二回に分けて塗りも塗ったり、一階は20kg二階は30kgの計50kg。なんかライトウェイトハウスでなくなってきているような気がするが大丈夫か。しかも二度塗りした箇所など、数えてみれば七層構造の壁(石膏ボード>表面の紙>ローラー漆喰>シーラー>鏝漆喰>シーラー>鏝漆喰)になってしまっているのだが。ミルフィーユか。
まあタイルを張り詰めるならまだしも、この程度ならまだ大丈夫でしょう。多分。

空き容器は燃えないごみの日にポーイ


11.29.2014

漆喰左官(3)カラーチェンジ

再施工用に改めて取り寄せた漆喰は一階用に12kg、二階用に20kg。前回は8kgと10kgでいずれも3-4割を残してなくなってしまったので、今回はこれだけあれば間に合う筈。
そして二階は塗り直すついでに色を「薄墨」から「鈍色」へとチェンジ。

ショールームにまで見に行って決めた「薄墨」だったが、板切れに塗られたサンプルと実際に広い壁面に塗った場合とではやはり印象が異なった。クールで微妙な色合いの「薄墨」色は微妙すぎて白壁とあまり変わらないように見え、当初イメージしたグレーと随分違う塗り映えとなったので、この際もう少しはっきりしたグレーである「鈍色」で塗りなおす事に再決定。
これは思わぬ怪我の功名。初回の施工で無事に上手く塗り終える事が出来ていたら「何か違うな」とは思いつつ流石に違う色で全部塗り直しを決心するまでには至らない訳で、失敗も悪い事ばかりではない。よしよし

11.27.2014

ホテルライクより老舗旅館ライク

最近やたらと目に付く「ホテルライクなインテリア」という謳い文句。
大抵は「憧れの」という枕詞がついていたりする。そうなのか。憧れなのか。
ホテルライクなインテリア。知ってるよ。
壁には白い瀟洒な柄の壁紙とウェンゲの合板、洗面所にはキラキラしたモザイクタイルにこれまたウェンゲの洗面台に置き型の洗面器にピカピカのグローエの水栓。床は落ち着いた柄の毛足の短いカーペットかダーク色のピカピカの合板フローリング、天井埋め込みのダウンライト、ベッドサイドに間接照明。
この辺りをおさえればホテルライクなインテリア一丁あがり。とりあえず高級感あふれる(んだってさ)ウェンゲの合板を多用すればホテルライクらしき見た目にはなるので、ホテルライクな家を建てたい方はとにかくウェンゲウェンゲお洒落なウェンゲと唱えていれば間違いないでしょう。ていうか最近の高めのマンションの内装もこんなのばっかだし。流行ってんだね

高級感あふれるホテルライクなインテリアもそれはそれでいいものだけど、自分が憧れるのは寧ろ老舗温泉旅館のような内装。古びていて決してピカピカではないが、見れば見るほど本当に惜しみなくコストを掛けて作られているのが良く分かる。綺麗な合板一枚べーっと張っておしまいにしている場所なんかどこにもない。張りぼてではない本物の素材だけが長い時を経て醸し出すいぶし銀の艶。

向瀧
向瀧 天井も手抜かりなし。蛍光灯カバーもいい感じ
向瀧
金具屋 これだけ幅広で木目が見事なパインフローリングなんか今日日なかなかお目にかかれない

もちろん予算と戦いながら完成した我が家は惜しみないコストを投下して作られたこうした本物の日本家屋とは比べるべくもないが、古くなるほど愛想を尽かされる家ではなく、古くなるほど魅力が増す家には少しでも近づきたい。あれこれ手を掛けるのはその為かもしれない。自分でやればタダだし。
使い込むほど味の出る木の床もきっとそれに寄与してくれる。あ、ちなみに杉の床とウェンゲの合板は相性最悪なんで。

11.25.2014

漆喰左官(2)敗因分析と対策

壁紙貼りに失敗したなら剥がして貼り直せばいいし、板金塗装に失敗したなら剥離してやり直せばいい。
しかし一度塗った左官壁は剥がす訳にはいかないので、リカバリ手段は上から塗り重ねる以外に選択の余地はない(最終手段として壁そのものを作り直す、或いは二重壁とする手段がなくはないが、いずれも大工事が必要)。
早速次の週末に施工を行うと決めると、再施工の準備と並行して初回がうまくいかなかった理由を分析する。

色々調べてみると、原因は単純かつ致命的な手順ミスである事が分かった。
まず漆喰がゴリゴリとやたら硬くて伸びず塗るのに大変難儀したのは、単に漆喰の練り不足。練り済み漆喰といえども無洗米のように手を加えずそのまま塗れるものではなく、柔らかくなるまで十分に練り直すのが当たり前。という事らしい。
まあそれもそうだよな…何考えてんだろ…

次に、塗る端から漆喰が乾いていってしまった問題は、下地の水引きを止めなかったのが原因。漆喰は塗った端からどんどん下地にその水分を吸収され乾いていってしまうので、施工性を維持する為にこれを食い止めるのが肝。具体的には、塗る前に壁面を十分に濡らして吸水を止めておく必要があった。

うーむやはりローラー塗りとは違うものだなあ。て感心するのが遅すぎる。
要するにリサーチ不足が全て。この辺の軽率さは幾つになってもなかなか改まらないのは困ったもんだ。新井選手よろしく護摩行でもやればいいのかしらん

11.22.2014

漆喰左官(1)初戦敗退

漆喰と下地シーラー、鏝に鏝板が揃った十月の三連休に壁塗りを実施。
まず家具をどかして養生を行い、現在の漆喰壁にシーラーを塗布して下地を整える…
…そういえばローラー塗りを行った際にはシーラーを塗らずいきなり漆喰を塗り付けていた。シーラーは食いつきを良くする為だけでなくアク止めの為にも必須であり、これを塗らずにいきなり合板に塗れば必ずアクが浮いてくるし、石膏ボードはアクがでない代わりに表面の紙がアルカリで侵されて紙ごと剥離してくる恐れもあるという。幸いそのような事態には至っていないが、当時はその重要さに気づかないまま一気にローラーで塗ってしまったのだから無知とは恐ろしい。
シーラー乾燥後二日以内に塗るようにとの注意書きにしたがって翌日に着手。まずは一階の北側の壁、玄関の手前までのおよそ4.5mの壁に8kgの漆喰「白土」を塗る…

妙に変だなー。おかしいなー。

思わず稲川淳二のような呟きが漏れる。
練り済みの漆喰は思ったよりずっとゴリゴリと硬く鏝で押し広げようにもなかなか伸びず、施工性は最悪。
更に漆喰は壁に塗りつける端からどんどん乾いていってしまう。乾いたらそこでおしまい。
何だこれは。
頭にクエスチョンマークが無数に浮かびながら悪戦苦闘すること七時間、塗る予定の面積の三割ほどを残したところで漆喰が尽きる。
これはまずいな。
気を取り直して二階の北壁7.7mに漆喰「薄墨」10kgを塗る。一階の悪戦苦闘がここでも寸分違わず再現され、おかしいなー変だなーと稲川淳二の口真似をしながら八時間もかけて格闘した挙句、壁面の六割程を塗ったところでやはり漆喰が底をつく。
これは大いにまずいな。
振り返れば眼前に広がるのはつぎはぎだらけでボサボサな表面の、塗り壁の味というには余りに酷い仕上がりの洞窟のような壁、それも中途半端な場所で終わっていて…
見事に失敗だ。これをどうすればいいか…いや慌てるなとりあえず一時撤退で対策を考えよう。ていうか疲れた。寝る

11.13.2014

謎が謎を呼ぶ現場

先日のエントリで書いた帰宅途中の工事現場はその後どうなったのか。

8月、灼熱の太陽のもと着工したビル建築工事は始まったその途端に何から何まで仕様が変更となり、
9月、秋の陽射しに照らされた現場は続行しているのかしないのか、
10月、気が付けば建築計画のスケジュール記載が消えて代わりにでっかく「?」マークが書き殴られたホワイトボードに落ち葉が舞い、

そして肌寒い風が吹き抜ける11月。とうとう、

白紙に戻す遣唐使

建築計画は文字通り真っ白に。
これは…

(アカン)

いまだ基礎コンクリートすら打っていない。これは…
どう見ても只ならぬ何かが起きている。何か遺跡でも掘り当ててしまったのか、
それとももしかしてこれはサグラダファミリアのように「建築資金が集まったらその分だけ少し工事、そしてまた資金が貯まるのを待つ」という感じで建てるビルなのだろうか。いやそんなバカな

果たして無事完成の日を迎える事が出来るのか、引き続きこの現場には要注目。(←ただの野次馬根性)



11.11.2014

一階の壁も左官

徳大寺有恒氏死去。中年以降の年代で氏に影響を受けた男性は相当数いるだろうが、自分のクルマ趣味というか自動車観においても福野に次いで大きな影響を受けた人物だったといえる。自動車がすっかり白物家電化してしまった現代においては、氏のように車をもって(恥も衒いもなく)ロマンを語る物書きはもはや現れる事はないだろう。その文章は本業たる自動車評論よりも寧ろ若き日の車仲間や往年の六本木族との交遊を綴ったエッセイや回顧録の方が面白く、粋さを残した当時の遊び人文化※1をどこかとぼけた客観的な視点で描写した文章は興味深く読んだものだった。葉巻と美女とトラッドとスポーツカーを愛し、野暮とミニバンが大嫌いだった氏の冥福を祈る。


* * *

左官で色を変えてみようと思い立ったのは一番面積の大きい二階の北側の壁だが、手始めに一階の北側の壁も左官で漆喰を塗り重ねてみる事とする。これは震災で入ったクラックの補修も兼ねて。
一階の壁に鏝塗りする漆喰の色は「白土」、すなわち色は変えない。二階に比べてシンクやら吊戸棚やらキャビネットやら冷蔵庫やらで格段にモノが多い一階はできるだけ色遣いを少なくシンプルにしたいという事もあるが、一見して同じ色でもよく見ればローラー塗りと鏝塗りで違う質感の壁が混在するのも面白そうな気がするし。という事で今回のDIYは、一階と二階のそれぞれ一番大きな壁一面の左官工事というなかなかに大掛かりなものとなった。


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※1 テレビすら普及していなかった昭和30年代の東京で学生の身分で外車のスポーツカーを乗り回し、麻布や六本木を遊び場に出来た遊び人は紛れもなく良家の子弟。

11.02.2014

壁の色を変えてみよう

我が家の内壁には全て漆喰を塗った。
とはいえ、ローラー施工のお手軽漆喰。何しろ引渡しから入居まで与えられた工事期間は四日間、とにかく時間がないので難易度が低く作業性が良いローラー以外の選択肢はなかった。
ローラーで塗れる漆喰だからニセモノだと言う訳ではないが、本来漆喰は左官で塗るものだというのも事実。時間が十分にあれば自分もローラーでなく鏝塗りを選んだだろう。
心の片隅に僅かに残ったその蟠りの他に「出来れば白以外の色も塗ってみたかった」というこれまた長年燻っていた思いもあったのだが、いずれも「漆喰の上に漆喰は塗れない」という常識?で棚上げに。

しかしふとした機会に調べてみたところ、漆喰on漆喰については厳密には
「そのまま重ね塗りは不可、下地を整えれば可」
が正解だという事が分かった。
確かに漆喰の上にただ漆喰を塗っても付きが悪く、無理に塗ってもすぐに剥がれてしまう。
だから表面を漆喰でなくすればいい、つまり食いつきのいい専用シーラーを下地として塗布し、その上に塗れば問題ないのだと。
あ、なるほど。
それを知って長年燻っていた種火が勢いづき、「一面の壁色を変えてみよう」と決めたのがこの夏。

色漆喰は普通の漆喰に絵の具を混ぜても作れる。しかし色彩センスに今一自信がないのと、自作の色漆喰は再現性がネックになると踏んで既製品を使用する事とした。
色漆喰はローラー塗り漆喰の時に選んだメーカー「カラーワークス」のものが最もバリエーション豊富で色のセンスがいい。加えてここの漆喰は鏝用でも練り済みなので使いやすそうだ。
しかしPCのディスプレイに表示される色はあまりあてにはならない。
まずは実物を見なくては。

と言う事で、7月初めの週末を使ってカラーワークスの本社兼ショールームに行ってみる。
前回行った時から四年半、その間にショールームは用賀とは全く様相を異にするディープな下町、東神田に移転していた。
家賃の低さからか最近はいかにも目黒や下北沢近辺にありそうな雑貨店やアパレル、飲食店が東東京の下町を選んで出店する例が増えている。同社のショールームビル一階にもオサレなカフェ&バーが入店し、道を挟んだ向かいにもオサレ家具屋が店を開いている。

カラーワークス本社「パレットビル」塗料屋さんらしく壁面がお洒落
同社のhip漆喰サンプルは三階ショールームにあった。検討のために許可を取って漆喰各色のサンプルを撮影。

「鈍色」「青磁」
「枯茶」「藤鼠」
「薄墨」「白土」
この他に「灰桜」と名付けられた桜色。
どれも微妙な色遣い。「藤鼠」と名付けられた墨色を第一に考えていたが、抹茶のような色の「青磁」も好ましい。
結局この場では決めきれずに帰宅して改めて検討の結果、淡いグレーの「薄墨」で行こうと決定。