2016年12月27日火曜日

おろしや国一週間(1)ビザを取る

日本のパスポートが高値で取引されている(らしい)のは、それさえあれば世界中の大体の国へはビザなしで渡航できてしまうから。使い勝手が極めていいのだ。当たり前のようで当たり前でないこの事実は、日本という国の国力と長い間かけて培った国際的な信義の賜物。日本人ならそう悪いことはしないだろうし入れてやってもいいかという信用の表れだ。先人に感謝。
ちなみに某国のパスポートを持ってビザなしで渡航できる先進国は、かの国が世界第二位の経済大国となった今でも殆どない。どういうことなんでしょうねえ(すっとぼけ)

その日本もロシアから見れば敵の大将の子分であり、太平洋に蓋をしている目の上のたんこぶ。当然ジャパンパスポートの威光は通用せず、かの国に渡るには今でもビザの取得が必要。
それも結構厳しく、個人で取得するには滞在予定ホテルの発行した予約バウチャーの提出が必須。ある程度のホテルであればバウチャーを発行してくれるのは後程分かったことだが、ビザ発行にもそれなりの日数が必要であったこともあり、今回は素直に金で解決。
すなわち、ビザ取得代行業者に依頼する。

ロシアビザセンターにネットで申し込んでからパスポートと写真一葉を郵送。取得を急ぐほど費用は高くなるが、自分は「二週間待ち・期間一か月・再入国可能」ビザを選択し8,000円を指定口座に振り込む。
待つこと二週間、ビザが印刷されたパスポートが無事返送されてきた。


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ビザ取得といえば印象に残るのがシリアのビザを取った時のこと。
もちろん今の国家崩壊したシリアではなく、今は亡きアサド大統領独裁のもと、国民は言論の自由はなくとも平和と秩序と繁栄を享受していた社会主義国の優等生であった頃の話。※1

シリア大使館は赤坂の奥の閑静な高級住宅街にあった。蝉しぐれだけが響き渡る夏の午後、汗を拭きながら地図を片手に坂道を上りたどり着いたその大使館は、小国の常で大使館とはいっても個人の豪邸といった趣。その門をくぐり玄関のチャイムを押して来訪の用件を告げると、ややあってリモートで玄関ドアが解錠された。
中に入り、インターホンで指示された通り薄暗い廊下の突き当りまで足を運ぶと木製のドアをノックする。
ドアを開けると十五畳ばかりの部屋。正面奥にはマホガニーと思しき大きな木製の机があり、その向こうで眼鏡をかけたグレーのスーツ姿の中年と呼ぶには少し若いくらいの女性が足を組み一人で書類を書いている。見たところ日本人のようだが、いかにもキャリアウーマン然としたてきぱきとした物腰はアナ・ウィンターを彷彿させる。

改めてビザ申請の用件を告げ、毛足の長い絨毯の上を歩いて机の前に進むと持参した必要書類を手渡す。
おおまかな日程表と職場上司の人物推薦状、それとシリア出国後にイスラエルには入国しないという誓約書。
書類は職場のPCで仕事の合間に作成しプリントアウトしたもので、推薦状は自分で書いて仲のいい先輩社員にサインだけしてもらったものだ。フォームは全て英語が指定されている。

一連の書類にさっと目を通したアナは言った。

「大体いいんですけどこれ、この誓約書は少し問題があるので書き直してもう一度提出してください」
「何かおかしいですか」
「ここのところ、State of Israelと書いてありますね」
「はい」
「あそこは国ではありません。認めてませんから。Israelとだけ書いてください」

淡々とした声とこちらを一瞥した目には何の感情も認めることは出来なかった。
魚は空を飛べませんから。まるでそう言うが如く、ごく自然で当たり前のものといった口ぶりでアナはそう言った。

ああ、彼らにとってイスラエルは今でも仇なんだ。イスラエル人は仇敵なんだ。
そういえばビザ発行条件の一つに「イスラエルの入国履歴がないこと」があったことを思い出し、その憎しみのない淡々とした口調に逆に日本人には想像もつかないアラブ問題の根の深さを垣間見た気がしたものだ。


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※1 ろくでなしのイスイス団が支配する世界一危険な魔境シリアとなり果てた今となっては信じられないことかもしれないがシリア人は本当に旅人に親切で善良で、これまで訪れた28か国地域の中でも人間の印象はダントツの一番。ロシア?うーん最下位争いかな笑

2016年12月26日月曜日

聖夜の惨劇

佐川もロクなもんじゃないなあしかし。佐川がっていうかこの配達員の問題で幸い我が家を担当している配達のおっちゃんはまともな人なのだが、佐川といえば自分自身も被害を受けたことがあるのでやはり印象は宜しくない。40数万円相当の車のパーツを紛失してそのまんまばっくれようとした千葉の佐川お前んとこだよお前んとこ。業を煮やして自ら京都の本社に掛け合って弁償させたからいいようなものの、紛失が明らかになってから何度連絡してもあちらからは電話の一本も寄こさなかったし、多分本気でこっちが諦めるのを待つつもりだったんだろうな。あれ以来佐川を利用したことは一回もないのは言うまでもないが、発送元が佐川使うんじゃ仕方ないしなあ。
まあそういう業界もあるってことで。
しかしよくなくしたよなああんなでかい荷物を。え。


で本題。
むかーしむかし、あるところに。
小さな家に一人で住んでいる男がおったそうじゃ。

あるクリスマスの晩のことじゃった。
男はキッチンに立って洗い物をしていたそうじゃ。

そうすると突然、彼の足元から突然ジョバジョバジョバジョバジョバジョバとあり得ない、容易に想像はつくものの信じたくない音が響きわたったそうじゃ。

恐る恐るシンクの下を覗き込んだ男の目に映ったのは、思いっきり外れた排水パイプとそこから滝のように景気良く噴き出す排水であったそうな。




母さんこれがあのオネガ湖ですかっていうくらい水浸しになったキッチンの床を前に男が立ちすくんでいると、
「旦那」
「旦那」
「あっしらをお使いなせえ」
「お使いなせえ」

「おお、お前らは。そろそろ断捨離しようと考えていた貰いもの粗品タオル七人衆でねえか」


「あっしらこそこういう時に役に立つんでさあ。さあさあ」

「さあさあ」

排水が外れているのでシンクで絞るわけにはいかない。

男は貰い物タオルで片っ端から拭いては洗濯機にぶちこみ、拭いては洗濯機にぶちこみを繰り返し、七枚を費やして漸く床の腐食(恐らく床板の下の下地まで濡れてるしただでは済むまい)を最低限に抑える程度まで水気を拭き取ることができたそうな。

「お前らがいてー助かったのう」

「お安い御用でさあ。あっしらもまだまだいい仕事をs」ゴウンゴウンゴウンゴウンゴウン

男はこいつらを断捨離しないでいて助かったなあと一人ごちながら洗濯機のスイッチを押し、ゴウンゴウンと回る音を聞きながら漸く眠りについたものの、

すっかり寝不足となったせいで翌朝は危うく遅刻するところだったそうじゃ。



はあ~めでたしめでたし。
全然めでたくない!ああむかつく。


2016年12月24日土曜日

実用的おろしや国紀行(序)

ウェブログとただの日記帳との違いは実用性の有無にある。
有名人がアメブロあたりでよく書いている、やたらと改行だけ多くて内容は何にもないしょーもない取り留めもない日記。
あれに価値があるのはその有名人の存在自体に価値があるから。
あれ食った、これ飲んだ、美味しかった、岩盤浴行った、リラックスした、明日も頑張ろう!終わり。
こんなしょーもない内容でも彼らの日常を知りたいというファンにとってみれば価値がある。なのであれはあれでいい。
しかし我々無名の一般人、しかも匿名の一般人のそれなど誰にとっても何の意味も価値もなく、正しくチラシの裏にでも書いてろという代物。その辺の顔も素性も知らない姉ちゃんがあれ悩んだこれ悩んだ青空がきれいだったサムゲタン食って美味かったなんて知らねえよそんなもん。一般に公開するのであれば少しでも何かの役に立つ内容でなくてはやる意味がない。
要するにポジショントークが求められるということだ。例えば建築事務所を営む観点から家について語る、医師が医師の目から日々の生活について語る、税理士の目から日々のファイナンスについて語る、何らかの難病に苦しむ人が闘病生活について語る、あるいは母親が日々の子育てについて語る。そういう内容であれば必ずや誰かにとって得るものがある筈だ。
自分としても仕事中心に語ればもう少し特定の層の興味は惹くことは出来るのだろうがサラリーマンの悲しさ、守秘義務も多い自分の仕事については多くは語れない。壁に耳あり、本人バレしたらただでは済まない。
なのでカーサ・エゴイスタのタイトル通り、このブログでは「一人暮らしなのに家を持った男」「しかも建売じゃなくわざわざ注文で超小さい家を建てた男」というポジションから、何を考えてそうしたのか、またそういう男は何を価値あるものと考えて超小さい家の一人暮らしを楽しんでいるかなどを、自分と同じように家を建てることを考えてこのブログを目にした独身者をディスプレイの向こうに意識しつつ書いていたりする。時々脱線するような気もするが細かいことは気にしない。
(追記:S氏のクライアントであるという素性がはっきりしているだけでも、S氏の家に住む人が綴るブログはS氏との家づくりを検討している人にとって価値がある情報と言えるだろう。と言い訳)

おろしや国から帰還してその旅路を上げるにあたっても同じく。
自分がネットの情報に助けられて旅をすることができたように、今でも決して情報が豊富とはいえず、また日本人からすれば少なからず風変わりなかの国への渡航を検討している人にとり少しでも参考となるように、単に画像をパラパラ挙げて綺麗だったー楽しかったーで終わらずに実用的・実践的な内容とするよう心掛ける次第。
まあハワイあたりだったら身近だし情報も豊富だし「楽しかったー。美味しかったー。終わり」でいいんだろうけどね。(偏見)

レニングラーツキー駅前

2016年12月13日火曜日

おそろしや国通信


(ピーッザッザッ)えーこちらペトロザボーツクのオネガ湖畔でs(ザーッ)えー冬は湖が凍るので港は閉鎖でキジ島には行けないそうです確かに湖カッチカチやがな湖カッチカチやがな大事なことなので二度言いまし(ザザッ)仕方ないから湖上を散策しましてェー列車が出るまで時間潰してま(ガガッ)あー現在マイナス15度ォー体感温度はーマイナス22(ザピッ)えー今回の旅ではー(ザザザッ)装備品の課題が見つかりましたーそれは手袋ォーとにかく手がヤバい手がヤb(ザザッザッザーーーッ)

2016年12月10日土曜日

おろしや国へ

今日から遅い夏休みで初の訪露。
モスクワの本日は最高マイナス2度最低マイナス10度と幾分暖かいキジ島に向けて出立する月曜は最高最低ともそれぞれ10度も低下する見込みというから恐ろしい。おろしや国はおそろしや国

今回より旅の相棒となるメインバッグ(スーツケース)・サブバッグ(カメラバッグ)は顔ぶれが一新、合わせてストラップも更新。新製品を多数投入したカメラ回りはシステムとしての使い勝手の向上に大いに期待。期待通りであったなら帰国後褒めずにいられないレポ、期待外れであったならこき下ろさずにいられないレポ。いずれにせよアウトドア派カメラおやじは必見。さて時間だ


2016年12月9日金曜日

流行の先端?

satosatoで採用された洗面台に実験用シンクを使うアイデアがPinterestの事例でも取り上げられている。
実用的でおしゃれ!『実験用シンク』で快適な水回りにしよう!

記事は今年の9月、satosato完成はその3年前。
時代の先を行ってるじゃないか。そのうち「独身でも家を建てて快適に住もう!」なんて記事が組まれたりするかもしれない。とんがってるね

2016年12月8日木曜日

試される大地

近所の不動産屋に張り出されている物件ビラは通りがかるたびにチェックしている。もちろん買うためでなく、時々出てくる面白い物件をチェックして、自分だったらどのような家を建てるだろうと考えを巡らすという趣味。
例えばこんな土地にガレージハウスを建てるとしたら


S氏に挑戦

こういう極端な土地であれば木造で十分なスペースと強度を確保するのは難しいだろうからRC壁式構造しかない。台形の家にして西側に大きく開口部を取り一階は小型車一台分のガレージ。一階はそれでいっぱいいっぱいなので玄関は二階。南側に余った土地にらせん階段を設け、各階へのアクセスはすべて外からとする。
らせん階段は大物家具は通せないので家具は各階の西側に設けた大きく開く窓から搬入。予め壁に滑車を設けておき、ロープで吊ってするすると。
容積率300%なので四階建てで行ける。建坪6坪延床24坪、四階建て屋上つきのなかなか魅力的な家ができる筈だ。ただし年寄りが住むにはきつい家だろうけど。
求む挑戦者。


2016年12月6日火曜日

LWH003はライトウェイトハウスのスタンダードとなるか

S氏に誘われて11月最後の週末にLWH003を訪問。
LWH003:立川の家はLWH002から五年ほどの間をおいて建てられたLWH003シリーズ最新作だが、完成からほぼ一年を経過したところを訪問した今回でLWHの新たな標準形が見えてきた。



確かに近い色

LWH003の外壁は家族の一員であるロシアンブルー(名前はジジ)の毛並みに合わせたグレー色。周囲の家と比べてもコンパクトなサイズと相俟って控えめな佇まいのLWH003だが、中に入ればその印象はいい方向で裏切られる。
ドアを開きモルタル仕上げの玄関をあがるとほどなく階段。LWHの基本間取りではデッドスペースである階段は端に寄せて出来るだけ大きなモノスペースを確保するのを優先していたが、LWH003ではそれをあえて家の中央に据えることで、大空間の代わりに廊下やドアで仕切らなくとも周囲に自然に分けられる複数の空間を持つようになった。確かに複数の住人が住む家としてはこちらの方が有効である場合も多いだろう。
LWH003では南側の空間の真ん中に造作したキャビネットを置き、ご夫婦と小さな子供一人に丁度いいサイズのダイニングとキッチンとの二つに分けていた。自由度が高く、生活環境の変化に応じどのようにも出来る。




二階建てである筈のLWH003の二階からはさらに上に向かって階段が伸びていて、その先にはロフトというより小部屋と呼ぶのが相応しい十分な高さと広さを持ったロフト階が広がっている。
高さ1mにも満たないLWH002の物置ロフトとは違って立派に部屋として機能する広々としたロフトの恩恵で、LWH003は登記上の床面積こそLWH002とほぼ同じだが実際にはずっと広く感じられる。
というか事実広い。

コンパクトな外観からは想像がつかないまさかの三層、その要となる存在感のある階段がこの家のアイコン。添えられた目隠し用の杉材の縦格子が空間を上下に長く見せ(縦縞の服は着る人を長身に見せるのと同じ)、内部のスケール感を引き立たせるのに一役買っている。


ちゃんとした階段がロフトまで続く

裏から

ロフトまわりのダイナミックな造形とこちらを見つめるアルパカ

天窓はロフト階と二階のあかりとり

ちゃんとしたロフト階のちゃんとした窓

リビング天井。抑え目な照明がいいセンス

内装はS氏お馴染みの無垢無塗装の杉材。
杉を白木のまま用いた清楚で簡素でどこか和を感じさせるスタイルはS氏が得意とするもので、利休好みならぬS氏好みと言っていい。
足すのは容易だが削るのは難しい。物足りなさを感じるぎりぎり手前で止められている抑制の美がS氏の手掛ける家の特徴でもあり、白木の杉だけが持つ清浄な雰囲気は確かによくマッチしている。この風情を活かすならば白木は白木のままで手を加えず自然に使い続けるのがいいだろう。どこかのなんとか002の家主のように階段(あれは杉ではないが)を塗るような余計なことはしない方が無難。しかもあいつまた塗ったらしいぜ(えっ)


床材は厚さ一寸幅七寸の堂々たる杉板。子供の手と大きさの違いに注目

まとめると、控え目な外観からは意外なほど広い内部空間を自然かつ合理的に分け、内装は楚々とした杉材仕上げで床には厚さ一寸幅七寸の杉板を贅沢に使い、住人は小さな子を含む家族とペット。
外観・内部構造・内装から住人に至るまで、これこそS氏の唱えたLWHの標準形となるべき家ではないだろうか。一作目二作目と本来の想定と違うおたくの独身者用の家が出来上がってしまい妙な色が付きかかったLWHシリーズだが、三作目にしてようやく標準的な作例が出来てS氏も愁眉を開いていることだろう。実例ができたことで家族が住む家としてのイメージが湧きやすくなったこともあり、これで悲願の三桁達成に向けて受注が加速するに違いない。多分ね



LWH003ご主人が手ずから設置した温風器ユニット。パクりたいアイデア


なおLWH003の家づくりは典型的な夫唱婦随型。DIYにも前向きなご主人がこの家のイメージの源泉のようで、この点で婦唱夫随型のsatosatoとは全く対照的なのが面白い。satosatoではアイデアを出すのは主に奥様で、旦那様はそれを承認しつつ年末の忘年会でPPAPをやるという役割分担。世間一般ではどちらが多いのかしらん