7.30.2017

激安家具のリスクとは

白アリがついているかも!?なんていう内容は煽りが露骨すぎて逆に嘘くさく感じてしまうが、それ以外にもこの記事には同意できない点が一か所あって、

「(前略)品質がよくないので耐久性も弱く、壊れやすい。修理保証もありませんから、結局、買い替える羽目になります」

 結果的に“安物買いの銭失い”となり高くついてしまうのだ。

ここのくだり。
個人的な意見としては激安家具の問題点は耐久性が弱く壊れやすいところでなく寧ろその逆、激安といえども耐久性はやたら高く、普通に使う限りにおいては平気で「一生物」になってしまうものが少なくないところにある。若い頃さんざん安物を使った経験から言えば、ホームセンターで9800円で売っているテーブルも1000円で売っているカラーボックスも、その気になれば立派に「一生物の家具」として使えてしまうものだ。

「お金もないし取り合えず」で買ったつもりの家具が一向に壊れてくれず、壊れてもいないモノを捨てて買い替えるのも躊躇われる。機能として全く問題ないモノを捨ててそれなりに値が張るモノに買い換えるにはそれなりのタイミングと内面の盛り上がりが不可欠で、数少ないその機会を逃すと次にそれが訪れるのはいつになるか分からない。本当に欲しいモノは心の隅に常にあるので時折コレジャナイ感が頭をもたげることはあるもののすぐに日々の雑事に紛れてしまい、そんなことを繰り返しているうちに気がつけば別に好きで買ったわけでもない間に合わせの家具が私の「一生物」になっていました…となりかねないことが妥協して家具を買うことの最大のリスクではあるまいか。

ただしこれは普遍的なリスクではなく、あくまで好きなものに対する執着の強いある種の人々に限定したリスク。コスパが第一で安くて長持ちならそれでいうことなしという人にとって「安くて長持ち」はリスクどころか願ったりかなったりの美点に他ならないし、それはそれでその人にとっては正しい。
この種の問題はそこが曲者であって、自分にとって不正解にもかかわらず隣の人にとって正解みたいだからこれは正解、そう自らに言い聞かせてみてもなお拭いきれない違和感は合わない靴のように絶えず心につきまとう。その気持ち悪さの根源を突き止めるにはやはり自らの心の内を覗いてみる他はないだろう。

7.17.2017

日帰りフランスロールの巻

基本的に夏場は一切車に乗らないのだが、それでも機械ものであれば調子を維持するために毎夏一回は運転するようにしている。
今月の三連休を利用して大汗をかきながらメンテナンスドライブに繰り出した先は福島市のロマンドーロール本店。21世紀初めに一世を風靡したテレビ番組「マネーの虎」でオリジナルクレープである「フランスロール」で見事にマネー獲得、そしてマネー獲得者の中でも更に希少な大成功を収めたもののその後慢心からくる放蕩、逮捕、会社からの追放と絵に描いたような転落劇。そして今また社長として復活し、事業規模は大幅に縮小したものの東北を中心に地道に事業を継続しているロマンドーロールその本店が今回の目的地。
人間は限界を経験で測るもの、往復で600㎞の行程もかつて一日でむつ市まで走破した身にはそれほど大した距離ではない。問題となる熱気は二年前と同じく、スプレーボトルで身体をびちょびちょに水で濡らし扇風機で風を当てて気化熱を奪うセルフエアコン方式で凌ぎながら一路福島へ、とても車に乗ってきたとは思えないドロドロの姿で到着。



本日は社長ワンオペ体制のようで、店に入るやいきなり社長が接客に出てきて笑う。
店内はクレープ屋らしからぬ洒落た雰囲気ではあるが、深々と腰かけるソファは少々食べづらい姿勢かな




お目当てはもちろんフレデリック千葉が認めたというフランスロール。マネーの虎のこの回、そしてHPで述べているこだわりを見るに、甘いもの好きの身なら否が応にも期待が盛り上がる。
ROMANDÔ ROLLのフランスロールは、普通のクレープとは一線を画した商品です。生地、生クリーム、チョコレート、果物、トッピング、製法、すべてにこだわった、ケーキにも負けない商品です。



で食した感想は…普通に美味しい。
が、やっぱりクレープは焼きたてが一番美味しいかな。
注文を受けてから焼くのかと思ったらさにあらず、ショーケースから取り出してそのまま供したのは些か興ざめ。確かにケーキやタルトといったスイーツは注文を受けてから焼くわけではないし、ケーキにも負けないと自負する一品であればケーキのように供するのもありなのかもしれないが…やっぱり出来立てのフランスロールが食べたかったなと。
片道300㎞の往路はすいすい3時間15分、帰りは断続80㎞の渋滞にドはまりして5時間半。行きはよいよい帰りは怖い


散らかりの遺伝

お金持ちは無駄に持たず貧乏人ほど無駄に持っているものは体脂肪に限った話ではないようで。「貧乏隙間なし」とは言いえて妙な例え。ドキュメンタリーなんかで取材カメラが映す貧乏な独居老人の家は例外なくガラクタで埋め尽くされていて、見てるこっちがイライラするくらい散らかっている。
一連のツイートにもあるがモノが少ないのは生活の余裕の有無だけではなく、散らかっている状態や無駄なモノを抱え込んでおくことに気持ち悪さを感じるかという感性や意識の問題であって、モノ少なく生きることのできる親の元に生を受けたごく少数の幸運な人以外にとってこれは後天的に、自ら努力して獲得するしかない形質。

肥満は遺伝するというのは単に体質の話だけでなく親の太りやすい食生活の慣習の影響を受けた子は同様に肥満に陥りやすいことを指すのだが、同様の言い回しに「貧困の遺伝」というものがあって、これは「貧困層の親は教育や文化を軽視する価値観を持ち、そのためのコストを忌避する」傾向が比較的強いため、その親に育てられた子が貧困から抜け出す機会を得ることは相対的に困難であることを遺伝に例えたもの。
自分としてはこれに「散らかりの遺伝」を加えたい。自分自身で意識していない人もいるかもしれないが、散らかし屋の実家は大抵散らかっているものだ。

我が家はどうかといえば、日々の垢を落とすように意識して持ち物の整理に励まなくては収納もあまりない小さな家はあっという間にモノで埋まってしまうだろうし、そのプレッシャーは常に肌で感じている。
田舎生まれ田舎育ちで田舎の広い家以外で暮らしたことのない我が親は典型的なためこみ屋。収納家具を買ってはせっせとモノを詰め込むのが趣味のようなもので、何しろ生活信条は
「モノはあっても困らない」「モノがないといざという時に困る」。
日本で暮らしたことのない外国人にとって靴を脱ぎ床に座る生活を想像するのが困難であるのと同様に、土地と水はタダみたいな田舎でしか生きたことがなく、しかも戦後の物資不足の時代を知っている人間にとっては「余計なモノはあっても困るだけだし、『いざというとき』など永遠に来ない※1」ことを想像するのは至難の業らしい※2。その影響下で育った子にとってその価値観から離脱するのが容易なことではないのは経験で知っている。

太りやすい体質を受け継いだ人間は気を抜くとすぐに太ってしまうのと同じように、自分も気を抜くとすぐに余計なモノをため込んで空間を乱してしまう習慣を受け継いでいる。人生も後半戦に入ったこれから、年を取るほどモノ少なく楚々とした生活を送るために今後は物欲とどう折り合いをつけていくかが重要な課題となるだろう。
  

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※1 まずいざという時とは何を指しているのか分からない。なくて困るものならその時に買えばいいだけの話だし、百年に一度の大災害を想定していたとしても都市住民なら全方面からの支援を最優先で受けられる。せいぜい缶詰数個と水一本程度用意しておけば非常時の備えとしては十二分で、いずれにしても雑貨をため込んでおく必要など全くない
※2 なので我が家が完成してしばらくの間は全くの親切心から100均あたりで買いあさったガラクタを箱詰めで送り付けてきたりする。そのまま着払いで送り返すのを何回か繰り返したらさすがに控えるようになったが、自分が他人の好意を拒絶することのできない心優しい子であったなら我が家はとうの昔にゴミ屋敷になっている

7.13.2017

LDBKはどうか

リビングダイニングバスキッチンでLDBK。
一階が全面土間の家はLWH001で既に実現しているが、それをさらに推し進めて一階を全面バスにする。床も壁も全てタイル張りで完全防水のモノスペース、一角にバスタブがあってもう一角にシンクと換気扇。キッチンの換気扇以外にも強力な換気扇と浴室乾燥が備わっているので、湿気はたちどころに排除できる。
帰宅するとすぐに全裸になって裸族生活。どれだけ暑くても水を一浴びすれば涼しいのでエアコン要らず。タイルの下に温水床暖房を通せば冬でも暖かいし、24時間風呂のバスタブからは常に湯気が立ちあがって冬場に痛めやすい喉や乾燥肌にも優しい。
掃除はいたって簡単、水で流すだけ。掃除機も雑巾も不要。
壁には防水ディスプレイとスピーカー、ダイニングテーブルも椅子も錆びず腐らない樹脂製のものを。こんなのとかいい感じ。食事の後は水をぶっかければいいのでナプキンも雑巾も要らない。食器洗いの水はねなんか気にする必要もない。
唯一困るのが宅配便などの予期せぬ訪問者だが、その時だけガウンでも羽織ればよかろう。アポがある来客の時は乾かして普通の家のようにして、普通に服を着て出迎えればいい…



と、ここ最近の暑さのあまりこんな気持ちの良さそうな家を夢想してみたりする。
木造ではなくRCである必要があるので初期コストはかかってもランニングコストは随分安くついてエコ。こんな家を誰か作ってみませんか。間違いなく国内外から取材が来るので出たがりの人にも最適。さあさあ

7.07.2017

なお、UBの照明は

感電注意

ごくシンプルなポーセリンのブラケット。メイドインポートランド
旅先としてあまり魅力を感じないのでこれまでに一度も米国に行ったことはないのだが、全米住みたい街ランキング一位かつコーヒーの美味しい街一位との誉れ高いポートランドには一度は行ってみたい。
狭いUBに取り付ける照明はシンプルでコンパクトで自己主張しないタイプが望ましい。交換した照明はこの条件に叶っていて安価、材質もUBの雰囲気には合っているのでこれはこれで気に入っている。こちらは販売サイトがしっかりしてるのでクレカで買えるのはいいが、本体価格の二倍も送料をかけるのは勘弁してほしい。


ビフォーの画像はなし。プラの半球型の何の変哲もない照明は普通すぎて撮影する機会もなかった。

イメージ画像

7.04.2017

浮造りの床

浮造りと書いてうづくり。床材の表面をそぎ落とし年輪を浮かび上がらせることで木目の美しさを強調する効果がある加工だが、床材の種類によってはわざわざそんな手間をかけなくても勝手に浮造りの床となる場合もある。



画像は施工後6年を経過したマニハウスの杉床。
見事な浮造り加工のように見えるが、さにあらず。柔らかい杉材は何もしなくても時間の経過とともに表面が徐々に痩せてきて、痩せずに残る硬い導管(=木目)部分とのコントラストが見事な浮造り(風)の床に変化する。
当初は痛々しいほど白かった表面は飴色に。これが本当の杉の床。

変わらないことに価値がある合板の床にとって古びることは劣化でしかないが、本物の木材は古び変色し使い込まれることでよりその価値を増すもの。それを知っている人に木の床は向いているし、上の画像を見て眉をしかめる人は合板フローリングかタイルの床※1にしておくのが無難。
趣味嗜好の問題であっていい悪いの問題ではない。硬い広葉樹であるメープルやオークであればここまでの変化はないが、使い込まれるほどに変色し趣が変わってくることには変わりない。

杉と同じく柔らかい針葉樹である松も経年変化は同様なのは古い寺や現存する城の床を見ればわかる。この変化を逆手にとって塗装の色落ち※2を楽しむのも面白いかもしれない。黒色であれば古い寺や城の床のような和風の渋い趣が、白色であれば古い洋館のようなラスティックな味が出るだろう。

色落ちした黒井由香(誰だよ)黒い床の例。彦根城天守

松本城天守月見櫓。彦根城ともども新築時は墨あるいは黒漆で彩られていた床が数百年の歳月を経てこのように変化

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※1 タイルの床は重いので木造には向かない。すなわちタイルの床にこだわる人は必然的にRC造か鉄骨造で家を建てることになる
※2 痩せずに残る木目部分だけジーンズのように色落ちするのではないか